金属加工と溶接の職人技によって生まれたこのチェアは、ただ座るだけの役割にとどまりません。見る角度により変化するうつくしさと緻密な構造が一体となったデザインに注目してください。個々のパーツが絶妙に組み合わさった結果、緊張感と安定感が共存する独特のバランスを生み出しています。このデザインは、ハンガリー出身のデザイナー、マシュー・マテゴの「コパカバーナチェア」からインスパイアされました。3次元に曲げられたパイプは加工のむずかしさを物語り、その複雑な構造がチェアの魅力を高めています。
- Size
W.590 × D.535 × H.800
SH.450
- Material
FRAME: WB PLATED STEEL & MAPLE
SEAT & BACK: UPHOLSTERY
マシュー・マテゴは1910年、ハンガリーに生まれ、ブダペストのボザールでアートと建築を学んだあと、1931年より活動拠点をフランスに移しました。1939年第二次世界大戦勃発後はフランス軍に加わり、ドイツで捕虜になるも奇跡的に帰還。戦後パリに戻り、自身のアトリエを開設。1945年から1950年代まで家具デザイナーとして最盛期を迎え、1960年代以降はタペストリーのデザインと生産の道を選びました。マテゴが家具を製作していたのは15年ほど。その間に生まれた数々の歴史的名作は、現代の市場においても高い価値を持ちます。
マテゴのデザインでもっとも革新的なのが「パンチングメタル」の開発です。生産の効率性と芸術的な美学の融合を目指し、金属の板に穴を開けたのです。これにより、金属を柔軟で彫刻的な形状にすることが可能となりまし た。1940年代後期にはこのパンチングメタルを用いて多くの家具をデザイン。マテゴのパンチングメタルは、家具や照明だけでなくトレイやマガジンラック、ゴミ箱など200型以上におよぶフランスの日用品にも応用されました。
彼の代表作である「コパカバーナチェア」は、この新しい金属加工技術を用いデザインされました。この椅子の特徴は、一筆書きで描かれたような視覚的な効果。独特の形状と細部のデザインのうつくしさに目を奪われます。また、人間の体に自然にフィットするようなフォルムが、座り心地の良さも提供します。
EDITORAのチェアデザインに、この「コパカバーナチェア」からの影響を明確に見て取ることができます。特にコパカバーナチェアが持つ流れるようなラインや、金属の柔軟な形状を用いたデザインです。マテゴの革新的なアプローチを継承しながら、現代の生活スタイルやニーズを加味した新たな解釈として、EDITORA独自の美学を表現しています。